旅の奇跡はたまに起きるね

saitoon2008-06-01

この日からサマータイムになってた。
気がつくと朝9時。自分の時計は午前8時。
 
ホテルの朝食。
日本人のカップルが泊まっていた。
隣のテーブル。軽く挨拶をした。
まあ悪くないんじゃない?
カルロスVには全然かなわないけど。
場所が違うけど、モロッコで食事を食べてるのをあまり見ない。
 
こっちの人は何をどこで食べてるのかな?
 
チェックアウトをして、駅へ。今日はメクネスへ。
昨日も会った昔の演歌歌手にしきのあきらみたいな人がまたいた。
ちょっと話をする。
 
メルズーガへのグランタクシーは1000ディラハムって聞いたよって行ったら、ちょっと困った顔をしてた。
正確に言うと嫌な顔。弟を紹介された。たぶん今だけ弟。
でもその人は九州に住んでたらしい。日本人の奥さんをもらったみたい。
 
「にしきの」は1000ディラハムってのは嘘だろうって言ってた。
あんた昨日全部で78000ディラハムって言ってたろうが、経費に幾ら乗せてたんだよ。
ゲストハウスが1000ディラハムっても言ってた。ゲストハウスってのは、昔のお金持ちの家の邸宅を使ったホテル。
あんたが一番信用できないんだけどね。
 
さいなら、フェズ。のつもりだった。
 
10時に出発。45分で到着。
とりあえずホテルを取る。ホテルマジェスティ。
2007ディラハムでシャワー付きの部屋。悪くないんだけどなんとなく暗いな。
レセプションで近くのローマ遺跡、ヴォルビリスとムーレイ・イドリスの行き方を聞く。
グランタクシーを使えって。丁寧に説明してくれた。
で、まずティトゥアンとシャウエン行きのバスの時間を聞きにタクシーでバス停に行く。
街を外回りして、12ディラハム。180円。
帰りはグランタクシー乗り場までで同じ額。
 
はじめ一人で乗れって言われた。50ディラハムって言われた。
ホテルで聞いたのは乗り合いで一人10ディラハム。
乗り合いでいいよ、って言ったら前2人、後ろ4人に運転手で7人詰めで車は出た。
 
本当にすし詰め。途中でうたた寝した。
やっぱ疲れが取れていないな。にしてもグランタクシー体験。
 
ムーレイ・イドレスに到着。腹減ったなって思った。
したらガイド要らないかって、しつこいおじさんがいた。
断ったけど、そこに居たくなくてヴォルビリス行きのグランタクシーに乗り継いだ。
また一人で30ディラハムだって言われた。ホテルで聞いたのは5ディナハル。
また乗り合いになった。
隣は羊の匂いのするおじさん。ちょっと誇りっぽい。まあモロッコだからね。
10分もすると到着。自分だけが降りた。
たぶんこの先どこかに行くんだろうね。
 
とりあえずレストランって書いてあるほうへ、レストランというよりテーブル付き屋台。まあ美味かったからいいや。
遺跡を一通り見る。
横田基地みたいな感じ。面白かった。かなり古代都市の構造が理解できた。
屋根とか壁がイメージできると相当理解できる。
 
出てグランタクシーに乗ろうとした。
4台くらいあった。古いベンツじゃなくて、けっこう今の車。
50ディナハルって言われた。
乗り合いでいいよ、って言ったら他の客なんかいないって言われた。
ざけんな、って断る。
ああそうかい、って感じの態度。
そう、たぶんそのうち根をあげて乗せてくれって言うだろうって態度。
かなり頭にきた。人の弱みに付け込むのが気に入らない。
こいつら、こうやって観光客から金巻き上げてんだろうな。
 
たかだか700円くらい、たいした金額じゃない。
だけど金の問題じゃなく、こいつ等の思うままにさせたくない。
最低の奴らだと思った。結局またタクシー。
 
出てくる観光客に声をかけた。
オランダから来てるって、トーマスとマリアンのたぶん夫婦。
車で来てるって。相談したら送ってくれるって。
甘えてメクネスまで送ってもらった。
 
ざまあみやがれ。クソタクシー。
こういうときは観光客同士で助け合うようにするのも手だと思った。
自分も何かあったら、絶対助けるようにしようと思った。
 
メクネスに戻ったのが午後3時。
せっかくだからメディナに行こうと足を向けた。
中学生くらいのが話しかけてきた。
英語とスペイン語とフランス語とベルベル語を話せるって。
 
話しかけてくるから話してると、こっち来いって言う。もう慣れてる。言う事聞いたって絨毯屋に連れて行かれるだけだ。
地図見てこっち行くって行っても、その道はこっちだって言う。それも結局嘘。
友達の店あるって。行かないって言うと、最後には親が死んで身寄りがなくて学生だから助けてくれって。
ガイド代くれって。来たきゃ勝手について来ていいよ、って言ってやった。
手のひらを返したようにどこかにいなくなった。
 
現実的に声をかけてくる奴らの6割はそう。3割はなんとなく話したいとか友達になりたいとか。
残りの1割は単なる挨拶。
 
どこかに連れて行こうとする奴らは確実に小銭目当て。
メディナの広場に着いた。日曜だから人も多い。
かなり雑然として、ところどころ動物臭があって、音楽が気に障った。
気温は34度、湿度がないからいいけど暑い。
 
もういいよメクネス。
サイトゥ−ンにとっては最低の街。  
どういう理由があってもこの周辺に泊まる気にはならなくなった。
泊まりもせずにチェックアウトした。
張っていたテンションが切れかかっていた。
 
旅先、それも交通手段が限られている場所で、一方的に値段をふっかけられるってのは相当にショックを受ける。
そりゃ何とかするよ、観光バスに頼み込んで近くまで乗せてもらうとか、地元の車停めて何とかしてもらうとかね。
決定的なのは旅行者に対しての態度。明らかな悪意の態度で来られたら、絶対に負ける。
 
分かってはいる。そういう悪意を持ってるのはほんの少数だって事くらいは。
ホテルをチェックアウトして駅に立っててまだ悩んでた。
メクネスに残るか、フェズに戻るか。
戻ったってやな事が続くかもしれない。ホテルがなくて高いところかもしれない。安宿で臭いかもしれない。
動く直前やっとの思いで電車に乗った。
 
電車に乗った。
空いている席を見つけて、座る。
スーツケースを上に乗せようとした。ふっと軽くなった。
後ろから手伝ってくれた人がいた。
 
隣に座った彼の名前はモハ。
モハ・ムスタファと言った。
フェズ?って聞かれて、そうって答える。
へえそうなんだ。って感じ。
ちょっと話したところで、彼が名刺を出してきた。
ゲストハウスのマネージャー。
一瞬引いた。そりゃそうだ。
でも英語の流暢さと中身のある話。そしてここはメディナじゃない。
ゲストハウスが高いのは知ってる。
500でいいよって軽く言われる。
昨日泊まったホテルさ、351なんだよね…400でどうかなって相談。
いいよ、マネージャーだもんって感じの話。
  
まいったな、って思ったのが正直。
簡単にOK出ちゃった。断りずらくなちゃったな。
でも、まあ良いや。もう捨て身だしね。
 
本当にやんなったら、旅辞めて日本に帰ればいいじゃん。
 
フェズの駅、日曜日だからってものあるんだけどタクシーがつかまらない。
ほと不思議な事に気がついた。
タクシーに人が乗っているのに停まるの。
んでまた人乗せて行ったりする。
あれなんで?って聞いた。
イスラムの習慣だって。方向が同じなら助け合うとか割安になるとかね。
ふうん、
結局少しずつ移動しながらタクシーを捕まえたのが午後9時。
電車の中でシャウエンに行くか、メルズーガに行くか悩んでるって話した。
国営長距離バスのCTM行って時間確認してからホテル行きたいって話したら、友達いるからそれでいいよって言われた。
うーん、なんか思い通りにされてる気がするな…
 
でも、もういいの。テンション切れかけてて捨て身だから。
やな奴になって日本に帰る。
 
言っちゃうけど、
この旅の途中でも、訳知り顔でちょっとイヤミな日本人旅行者に何人か会った。
そんな奴になってしまう気がし始めてた。

ダースベーダーになる前のルークの親父みたいな気分かな。
 
あ、負けちゃうなって、少し思った。
落ちるかもなって、ちょっと覚悟した。
 
初めて泣きそうになった。悔しさとか、人を信じられなくなりそうな気分とか。
 
ムスタファはCTMのカウンターで細かく聞いてくれた。
10人くらい友達を紹介された。
午後9時にエルフード行きが出る。そこからタクシーに乗り換え。
ティトゥアン行きは分かってる。
ムスタファの友達が一杯いた。聞くと学生の頃この辺でバイトしてたって。
そのまま、バスステーションでお茶をする事になった。
 
取りとめもない話、挙句にほとんど言葉が通じてない。
でもね、けっこう楽しかった。
初対面なのに仲間として扱ってくれて、アラビア語の読みとか発音教えてくれた。
結局終わったのは10時。なんとか気合で最後まで元気のいい日本人でいられたと思う。
帰りのタクシーの中、明日はブラックサイトゥ−ンになるかもしれないって思った。
 
着いたのは、メディナ
メディナの細い道を入ってちょっと。そこがゲストハウスだった。
二人並んで歩くのがやっとの細い道、つきあたった天井が低くなったところにある重厚なドア。
その奥がゲストハウスだった。
Riad Ibn Khalddoun。今でも読み方が判らない。たぶんリアド・イブン・クハルドウンと読むんじゃないかな…
 
夜11時過ぎ。
リアドの吹き抜けの広間に入った。
夜間灯がほんのりと点いているだけのその空間は広さが6〜70畳の広さ。日本で言う5階建ての高さを3階建で使っている。
1階の両翼に客間。24畳くらいはあるかな。もう偉い人の泊まる部屋のイメージそのまま。
その部屋のドアの高さが、たぶん5メートル。両開きのいわゆる王様かよドア。
 
唖然として、声も出なかった。
だって19世紀に立てられた、その建物の内装は何日か前にグラナダで見たアルハンブラ宮殿並のクオリティなんだもん。
ムスタファは、そんなサイトゥ−ンを見てご機嫌だったみたい。
そんなサイトゥ−ンは全く余裕をなくして唖然としてたけど。
 
泊まったのは、シングルルーム。
こはちっちゃい7畳くらいの部屋に、3畳位のシャワールーム。こっちで風呂全般をハマムっていうみたい。
ここは800DHでも安いと思う。
泊まるだけで価値のある場所ってのは久しぶり。もしかしたら初めてかもしれない。
 
ムスタファは朝ごはんどうするって聞く?
時間決まってるの、って返した。
いいや、起きて食べたいときがブレックファーストだよ。
普通は何時くらいなの?
お客さん次第だね。それがゲストハウスだから。
マジで小説みたいなセリフ聞いた。

じゃあ、大体だけど8時半で。
お礼を言って、寝た。