ロシア

霧の海の中へ
朝起きると濃い霧が船を包んでいる。
窓を開けてみる。ちょっと寒い。
そりゃそうだ。ここは極東ロシア。緯度もかなり高い。
今日の予定はゾディアックでのアザラシとラッコがいる海のクルーズ。
カメラバッグごと海水を被った気分的なショックがあって、出るのは躊躇する。
とはいえ結局楽しく行くのだけど。
 
その日、千島の海には風がなく、波はゆったり。でもポーラボートにとっては大きな波。
アフリカの大砂丘のようにも感じるうねりの中を進んでいく。
 
オリオンIIはあっという間に霧の中に消えていく。
滑るようにゾディアックは進んでいく。
正確には多少跳ねるのだけど、一昨日の波の高い海に比べれば凪のようなもの。
 
エクスペディションチームのアラスターは、かなりスピードを上げる。
他のボートもそれについていく。
緩やかな海だけど、船は小刻みに跳ね続ける。
 
5分くらい走ったろうか。
後ろで、ガン!という音。
振り返る。アンテナが折れている。
無線アンテナ。船と連絡を取る為のアンテナ。たぶん無くてもいいのだけど通信距離を伸ばすためについている。
 
視界がない状況だったから、ちょっと緊張した。