たぶん砂漠には魔女がいる

朝の砂漠は、女の体のような曲線を描く。
豊満で無用心で隙だらけな曲線を描く。
 
人は曲線を見て本能的に疼くんだろうなって思った。
エロティックって言葉は、その疼きを総称していると思っている。
 
掛け値なしに純粋に扇情的な風景だった。
人間だけじゃなく、たぶん動物は曲線に反応するんだろうなって思った。
 
ここで、女を撮りたいと思った。
だけど難しいことだと思った。自然の曲線の美しさって別格だしな。
 
夜明け前、砂丘の先へ歩き出した。
三脚とカメラを持って、足跡の無い出来るだけ先へ歩き出した。
小高い砂丘に登る。
延々と砂の海が続いている。
砂丘なんだと改めて実感する。
 
静かさは夜と変わらないはずなのに、なぜかほんの少しだけ騒がしく感じる。
ほんの少し、動いている生き物が多くなっただけで、騒がしく感じるものだ。
 
でも多いかもしれないな。
100頭くらいのラクダと人が動いているわけだから…
 
それにしても野営地の周辺は、ラクダの糞が至るところにある。
見えないほうが良いものもあるね。