明日イースター島を離れる。
実質今日が最終日。朝6時に目を覚ます。
朝から強い雨が続いている。
乗馬無理じゃんって思った。
 
7時に起きた。
それでも乗るって言われたら嫌だなって思って、スペイン語の断り文句を勉強していた。
 
9時過ぎても迎えは来なかった。
一瞬晴れた。でもいつもの事だけどパクスアの天気は気まぐれ。半日は雨じゃないかな…
あっちも、あきらめて来ないんだなって思って安心。
今日はスペイン語の勉強しようと決めた直後、ホテルのおっかさんが「馬乗るのあんた?」って聞きに来た。
時計を見ると9時15分。
玄関に出る。
タクシーが停まってた。あれ馬じゃないじゃん。
 
とりあえず運転手に言った。
この雨じゃ無理だから、午後晴れたら行くよって言った。
スペイン語で何だか言ってる。
大丈夫だから、いいから乗れ見たいな感じで。
 
一瞬の晴れ間が、乗馬に誘う。
車を待たせて、ジーンズに着替えてしまった。
Go horse riding!
Voy a Montana de caballo!
 
そうして奇跡は始まる。
 
タクシーはひたすら藪の中へ入っていく。
あれ?だってさ馬なんかその辺にいたじゃん。なんでこんな人気の無いトコに行くわけ?
ちょっと焦るんだけどね。
途中で不意に車を停められた。
実際には道に落ちてた倒木をどけただけなんだけど。
 
しばらく走って、掘っ立て小屋のようなところに着く。
 
それは言葉どおりの掘っ立て小屋。
鞍や靴が干してある。
その背景には、チョコレートのピノを巨大にしたような丘。
雨上がりの草の臭いと朝の光。
適当にその辺にいるニワトリ。4〜6羽はいるんじゃないかな。
低い雲と、ところどころ雲に隠れている青い空。
そして、適当に草を食べている数頭の馬。

そこには誰もいなかった。
 
それは間違いなく奇跡の風景だった。
自分には出来ないにしても、人が自然に溶け込んだ生活の理想形そのものと感じた風景だったから。
ビデオに撮ってみたけど、たぶんその空気感は写っていない。
 
しばらくするとピティが戻ってきた。
おお本当に来たか、って感じでね。
 
握手。グリップが強い。
なんとなくこういう奴は信用できると思う。
 
ワカリマスカ?
いきなり日本語で彼は言った。
ちょっと驚いた。というのは結構気遣いがあるのかなって感じたからね。
かなりごつい感じの、男というより漢。
保安官というよりは盗賊。
 
だけど名前はピティ。
その山の麓の牧場主は、たった一人でそこで暮らしていた。
 
馬には一度しか乗った事無いので教えてくださいって言った。
本当は一度もない。まあバイクに乗ってたし、かなり速かったから大丈夫なはずだって思ってた。
ロッコラクダも乗ってたしさ。
したら、
乗ってみろ、ってピティ。いきなり。
まあ、乗ってみる。