南極日記0202

2日
朝、デッキに行ったら陸地が見えた。
地図は頭に入っている。
目の前にあるのは南米大陸しかない。
 
あれ、着いちゃったの…
そんな感じ。
目の前に見えたのはケープ・ホーン。
大航海時代、多くの船がここで難破して、多くの船乗りが海に飲まれた場所。
 
元来、そんな鬼門なんだけど、現代の動力船にとっては怖い場所ではない。
それにしても、天気は快晴。
ほんの少し雲が浮いているだけで、日本の春の気分。
 
それは、もう旅の終わりを意味している。
 
船の上でやるべき事はほとんどない。
ラウンジの書棚に入って、南極の本とか動物の本を引っ張り出して眺める。
 
たぶん日本に帰れば、こんなのんびり時間を使う事なんて出来ない。
ラウンジには緩いバラード。
ねえ、これ誰歌ってるの?って珍しく昼にバーにいるエドガーに聞く。
Recardo Montana、チリの歌手だよ、良いでしょ♪
楽しそうに答えてくれた。
べたべたのバラード。スペイン語の舌を巻く歌い方が色っぽい。

マサなんか飲む?
うん、そうだね…
 
レッド・ローズ・ヒップ・ティー?!
いつもレストランで飲んでいたのを覚えてたみたい。
2人でハモる。目を合わせて笑った。
 
ふっとやりたい事が浮かんだ。スライドアルバムを作ろうって。
部屋に戻って、パソコンを持ってきた。
この旅で撮ったスタッフの写真を探す。そう多くはないけど、整理する。
 
マリリン、マルビ、オレさん、アニャ、ハンセン船長…一つ一つフォルダに集めていく。
このCD貸してくれない?エドガーに聞く。
いいよ、今流しているから1時間くらい待って、って返事。
さんきゅっ、て言ってまた写真を探す。
 
エドガーがたまに後ろから覗く。2時間くらいかかって終わった。
 
最後にエドガーから借りたCD、Recardo MontanaのLa VidaをBGMに入れた。
スライドショーのタイトルはFRAM ALL STARSにした。
もしかしたらこの旅で一番惹かれたのは、この船で働く人達だったかもしれない。

今夜はスタッフショー。二日前のドレーク海峡の揺れで延期になってた。
明日の早朝は降船。