マラケッシュの駅に停車した。ほぼサンセット。
まだ周りは暗くなっていないんだけど、光は消える寸前。
ほとんど影がなくなる時間、写真的にはマジックアワーとも言う。
 
影がないと、立体感や安定感がなくなる。不安定で緩やかな空気感が流れる。
ある写真家は、この時間を好んで撮影する。
ま、そんな時間に駅に着いた。
 
日本で言う列車の出口と同じ高さのホームというものは無い。線路の高さがホーム、いわゆる地べた。
ロッコのお客さんは大きな荷物の人が多かった。それを階段を下りるように出口で運ぶので列が出来た。
カサブランカで出会った日本人と外で再会する。良い旅を、と声をかけて別れた。
 
駅の出口には改札なんて無かった。そういえばミラノも無かったな。(実はローマでも無かった。)
 
降車客の流れに乗って駅の外に出る。タクシーが所狭しと並んでいた。
すぐにグランタクシーのドライバーに声をかけられる。グランダクシーって乗合タクシーの事。
金額を聞く。高い。ガイドブックに載っている金額を返す。
一人だから仕方ないと返事。断る。
地図は頭に入っていた。行き先は決まっていた。
旧市街、安宿エリア。歩いたら30分くらいで着きそうな感じだった。
交渉するのも面倒だったので、歩こうとした。
 
でもドライバーが声をかけてくる。英語混じりで。
俺の車はプチタクシーだから、その値段でいけるぜ、って感じ。
正直、根負け。面倒くさいのと何でもいいからってのが入り交じって、プチタクることにした。
40DH、たしか160円くらい。
 
このドライバーのおかげで混沌という絵を見る事になった。