車は15年くらい前の小型ルノー。こっちではお客はまず助手席に乗る。
エンジン音がウルサい。かなりガタがきている感じ。
TAXIという映画がある。フランスの映画だ。たいした事無い娯楽映画だけど人気がある。
そのせいなのだろうか…
 
夕方の渋滞時間、幹線道はそれなりに混んでいた。
バイクと車と馬が道路を一緒に走っている。
多分、彼は道路に出た瞬間、ローギアでアクセルを底まで踏みつけた。がこんって車がヨレる。
  
マジかよ、こっちの荷物はカメラだぞ!っと日本語で叫ぶ。
エンジン音で聞こえないのか、全く無視される。
次の瞬間、二車線の間を突っ切って追い越しをした。一瞬にしても、二車線に3台車が並んだって事。
すごいクラクションが後ろから聞こえたと思ったら、目の前にロータリー形の交差点。
バイクが3台。自転車バイク(モペット)って小さいやつ。そのインを回って容赦なく抜いた。
その前には馬車。二頭立ての馬車の鼻先を追い越して行く。
そう、マラケッシュの道は馬車が走っている。安いタクシーって感じだったりする。
そしてバイクにはナンバーなんて付いていない。二輪車は車両ではないらしい。
そんな道を地元の人は平気で横断している。
普通、ハネられるって。
 
ロータリーを抜けて広い道に出た。彼は落ち着いたのか、渋滞を抜けたからか普通の運転になってきた。
とは言え、車線を変えながらキュンキュン抜いて行く。
ちなみにシートベルトなんか着いちゃいない。足を踏ん張っているしかない。
 
そんなだから幹線道沿いは超排気ガス臭い。
ガス臭いんだけど、オープンエアのレストランが並んでいたりする。
彼は「ここ新市街のメインストリート」とか説明してくれるんだけど、無表情。
 
もう何か言うのもムリだった。うんうんって答えていた。
「ワケ分からない」って言葉、よく使うけど、本当はこういう事をいうんだなって分かった。
 
旧市街の安宿エリアに到着。ほぼ10分。
車は馬車の隣に止まった。急いだからチップくれって言われた。
ありがとと日本語で言って50DH渡す。信号の無い4叉路で降ろされた。
 
後ろの馬車使いから、馬乗るかって声をかけられる。
さすがに話をせず、首を振るだけで済ませて、宿探しに向かおうとした。
 
だけど、なかなか道路を渡れなかった。
この街の道路は真剣勝負じゃないと渡れない。
  
ロッコは甘くはないなって、知った。