砂漠のホテルの猫

出発まで、あと30分。
　
朝食は、ホテルに付いている。
プールサイドのレストランまで戻る。
　
小さな、生まれたばかりの猫が鳴いていた。
15センチもない子猫が一匹で。
側に母猫がいない。
一生懸命鳴いていた。
　
大人の猫はプールサイドに3匹いた。
そのうちの一匹が母親なんじゃないかと思った。
けど、鳴いている子猫に近寄る猫はいなかった。
　
東京の野良猫とは違う、と思った。
こういうことじゃないんだろうか…
食糧事情は東京の野良猫の方が意外に厳しいんじゃないかって。
だから、子猫の面倒はそれなりに見ている気がする。
ホテルの猫は、食べ物には困っていないんじゃないかって。
だから子供が大丈夫だと思ったら、放って自分の食べ物に行くんじゃないかなって思った。
　
だけど、それは野生では、まずありえない。
野生なら本能として、自分が死ぬより、子供が生きさせる方をDNAは選ぶ。
厳しい自然環境と、ホテルっていう人間が食べ物をくれる楽な場所が並立している。
だからこういうことが起きるんじゃないかと思った。