砂漠の王様は考えた

ちょっと降りるのがもったいなくて30分くらい居ただろうか。
 
王様は一番大きな砂丘がお城。
そこから、地上を見下ろしている。
ふと思った。
京王プラザの最上階よりちょっと低いくらいの高さだ。
 
頂上の一人が、スノーボードを持っていていた。
サンドスキーをするらしい。
いちどこれをやってみたかったんだよって。
 
みんなが声をかける。
がんばれ、とか気をつけて、とかぶっ飛べとか…
歌まで歌いだした。
この辺のノリの良さは日本人には出来ないかもな。
 
声援に送られて、ちょっと照れた感じ。
じゃ、って軽く言って、彼はスタートした。
どんどん小さくなっていく。
ま、雪に比べたら大して速度は出ないけど…
でも斜面は45度くらいある。
 
振り返る。
はるか遠くに街の明かりらしいのが見える。
たぶんエルフード。
 
ラクダで2時間歩いても、地の果てには行けないんだな。
それでも、凄いところだよ。
 
空気のある月に降りたようで、夜を淡く照らす第二の太陽があって、一期一会のすれ違いがあって…
砂は重力を軽く感じさせる。
 
情熱とか希望とか自由とかそういうものとは縁遠い。
静寂で、風と砂の流れる音しかしない。
目の前には、砂の海が地平線まで続いている。
 
ただ、生きているって事を実感していた。
それだけでも十分うれしい事だって感じていた。