砂のお城にサヨナラを言った
現地時間で11時を過ぎていた。
明日は夜明けの写真を撮るつもりだ、そろそろ帰らなきゃ。
野営地は、まだ火が消えていなかった。
谷のように見える。帰りは尾根ではなく斜面を選んだ。
jijiと僕は、まっすぐに歩き出した。
少しづつスピードが上がる。
いつの間にか走り出していた。全力で駆け下りていた。
砂に足はめり込みながら、落ちるように走った。
風になったように、子供のころのように全力で走って…
そして、足を絡めて、頭から砂に突っ込んだ。
jijiは笑いながら、近づいてきた。
頭から砂だらけで空を見た。
どこで寝る?
ガイドのイッショが聞く。
どこでって?
テントか、外か…
そりゃ星の下で寝たいに決まっている。
外で。
その夜は星の下で眠った。
頭の上を、かすかに砂が流れる音が通り過ぎる。
夜明け前に起こされる。
ボーっとした頭で、周囲を見る。
夜明け前だけど、空は明るい。
さすがにもう月世界ではない。
大砂丘に戻っていた。
夢のような風景だった。