白い壁の街の家

なんとなく小路から建物の中が見えた。
ちょっと覗き込む。
後ろから声が聞こえた。
「何やってるんだ〜」なんて感じの声。
振り向く。180センチくらいの坊主頭の男がいた。
 
うん?写真撮ってる。綺麗なトコだねって英語で言った。
ここどこ?
カスバだよ、って彼は言った。
カスバって…メディナじゃないのかな。
なんかやたら元気でニコニコしているんだけど、何の用なのかな。
なあ、中見たいか?
壁の中、家を指して聞く。
みたいみたい、って日本語で答えた。
 
旅の経験が、彼は悪い人じゃないって言ってる。
そのままついていく。
部屋をひとつづつ案内してくれる。
ここでいうカスバってのは、集合住宅のこと。
 
日本風に言えば、セメント作りの長屋だ。
マンションとかみたいに、区画わけが明確じゃない気がした。
水道はあったけど、各家庭までつながっているわけじゃない。
敷地の通り道に井戸があった。
そこから水を汲んで、台所で料理をするのかもしれない。