朝一でブラジル大使館へ行く。

saitoon2008-04-04

まだ土地勘が無いし、急ぐ必要もあるのでホテルにタクシーを頼んだ。
ホテルが用意したのは、赤い普通の乗用車。

はっきり言おう、白タクだ。色は赤だけど。
170ペソでどうだって聞かれた。
距離感も分からないし、ホテルが紹介するんだから心配ないと思って乗った。
後から土地勘が分かってくると100ペソでも高かったかもしれない。
要するに高くふっかけられたみたい。
分かった時には、気分が悪かったけど、その時はそんな余裕は無いよ。

車は超高級っぽい住宅街の中へ入っていく。
はっきり言って不便じゃん。不必要に広い建物が目立つ。
ブラジル大使館に到着。
9時前、開館前なのに20人くらいは並んでいた。
用件を聞いて来る人がいる。
ビザ申請に来たんだって答える。
申込書は?まだ書いてない。
振込書は?お金持ってきた。
それじゃ無理。
え?何?無理って…

前に並んでいた二人が説明してくれる。
「写真と申込書とビザ代金の申込書が揃っていないと受け付けてくれないよ」って…
それだけじゃなくて「銀行はHSBC指定だから」ってまで言われる。
 
頭が真っ白になった。
ただでさえ、日本のブラジル大使館で書類の不親切さを見てきた。
日本にある大使館なのに日本語の書類がない。つまり日本人へのサービスなんて考えていないのを目の当たりに見た。
日本で取れないなら、他の国の大使館の住所を教えてくれって頼んだら、いやいやコピーを持ってきた、詳細を教えてくれって聞いたら、ウェブで探せって感じの対応だった。
ツルッパゲのマネージャーが忙しそうに答えた。まあ奴らはサービス業じゃないから仕方がないかもしれない。ただゴミみたいな人格だとは思った。
あのハゲ、仕事つまんないんだろうな。ハゲだし、本当にツルっぱげにしていた。
ちなみにハゲのくせにバーバリー着てた。
 
メキシコでもほとんど変わらない。所詮ブラジルなんてその程度の国だと思えた。
 
何とかなるだろうか…
でもここで焦って何が出来るか…
 
分かっている事は、運転手は送り返してしまったって事。つまり、使える車はない。
そしてスペイン語で意思を伝えるだけの語学力はまだ身についていない。
指定の銀行がどこにあるかも分からない。
そして今いるのは、流しのタクシーが来そうにもない、高級住宅街。
申請は12時まで。残り3時間。
 
焦って一人で動いても何も解決しない。
大体、ここがどこかだって分かっちゃいない。
 
やれることは一つ。
大使館に事情を話して、なんとか頼むこと。
そのまま並ぶことにした。
 
30分、必要なさそうな厳重なチェックを抜けて、やっと窓口にたどり着く。
失敗したアフロみたいな頭のおばさん。
スペイン語で申し込みするのは無理だと思ったので、英語で話した。
一言目からスペイン語で返してくる。
は?英語話せる人はいないの?
Si !
みたいな返事。
英語話せる人出してって聞く。
しょうがないなって顔をされて、奥に行った。
15秒くらい。
すぐ戻ってきて、そこ座っててって言われる。
5分待っても誰も対応に来ない…
 
悪い予測がした。ってか対応が予測できた。
お客が掃けるまで、そっちを対応して、その後で杓子定規な説明をするんだろうなって読めた。
たぶん昼まで待たされる。
振込用紙の書き方が分からない。
態度を見てて、振り込み方を間違えたら、明日もまたやり直しさせる気だと思った。
 
何日かかるかも分からない。
メキシコ滞在中にビザが取れないと、今度はペルーで同じ事を初めからさせられる。
それでもダメならチリで…
旅どころじゃなくなる。そこまでしてブラジルなんて行きたくもない。
無神経で、まともに貧富の差も解決できない国に、
 
スーパーブルーになった…

座りながら、周りを見ていた。
携帯電話で話しながら書類を書いている女性がいた。
たぶん、30代後半かな?こっちの人の歳は読めない。
 
後は、みんな無表情。話せそうな人は彼女しかいなかった。
Excuse me. Do you speak english?
Yes.
Could you help me?
期待とかでなく、ほとんど独り言とかあがきに近い気分で彼女に話しかけていた。

結果として、彼女は奇跡のようにサイトゥ−ンを助けてくれた…
 
事情を説明すると、窓口とやり取りをしてくれて、その足で車で銀行に一緒に行ってくれた。
車は、ランドクルーザートヨタの。
高級住宅街をレースのようアクセルを踏んでは停まり道沿いの人に銀行を聞く、信号で停まると隣の車に大声で道を聞く。

車の中で話をした。
彼女の名前はモニカ、人材派遣をアメリカとメキシコでやっているって。
旦那さんが研究でメキシコに来ていて一緒に来たって言ってた。

なんでこの人はこんなに親切なのかなと思った。本当に感謝した。
残り1時間。銀行を見つけて、車を駐車。
銀行へ飛び込む。
振込用紙を2枚取って、一枚をくれた。
一枚は彼女が書き始めた。

…そういう事だったんだ、
彼女も振込みをしなきゃならなかった状況だったから一緒に行ってくれたんだね。偶然、振込みに行かなきゃならない人に相談できたことが奇跡に近いラッキーだった。
ただ、彼女にとってはついででも、こっちにとっては一生忘れない感謝なわけだけど。
 
大使館に戻る、彼女はブラジル人だから並ばずにパス。友人だって言ってくれて一緒に通してもらう。
 
ポルトガル語を英語に説明してくれて、書類も一通り出来た。
役人じゃないブラジル人はいい人かもしれないって、思った。
 
12時のタイムリミットに残り20分。
書類を提出、チケットを全部コピーしろって言われる。
 
世界一周分かよ!
すぐ後ろのコピーカウンターに全部って頼む。
 
イムリミットに10分。
コピーを持ってカウンターへ。
 
あのおばさんがいない。
モニカは申請を終わらせたみたい。
 
どお?って聞かれた。
いないんだよね…って答える。
 
すぐ来るわよ、と彼女。
 
サイトゥ−ンは無言。
5分前に出てきた。
 
モニカがポルトガル語で聞いてくれる、受付のアフロの仕方がないなって表情。
通った、ってその表情でわかった。
説明してくれる、受け取りは4月10日。その日までにメキシコに帰って来なくちゃならない。

ホッとして、大使館を出て行く。
Monica、I can't find the word thanks, muhas obrigado, guracias pol todos.
覚えたてのスペイン語と知ってるブラジル語で言った。

Don't warry.
ちゃんと受け取ってね。と彼女は別れ際に言った。
もちろん!
名刺を渡して、スペイン式のハグをして別れた。
 
As the journey goes by ...
これは、サイトゥ−ンの旅を助けてくれた天女様の一人の話。