13日13時。

もう北極圏にいる。
そして、太陽と水平線は一日中夕方のようなストロベリー色。
 
そんな中をトロルフィヨルドは進む。
 
トロムソが見えた。
北極教会がフィヨルドの右に、街の中心が左に見える。
前に来た時は、日が沈まない真夜中。今回は、午後。
それにしても太陽の角度は水平線から30度くらいから上がらない。
気分的には、ずっと夕方。
  
トロムソでは犬ぞりツアーに参加する。
同乗していた日本人のご夫婦は、犬が可愛そうだからと参加しなかった。
サイトゥーンは何も考えずに行く。
 
船を出ると、カリッと寒い。
海から湯気が出てる。
初めて見たかもしれない、気温が寒すぎて温度差で水が蒸化する現象。
  
バスで犬ぞり場?まで行くんだけど、トンネルに入って驚いた。
トンネルの中に交差点があった。
ちょっとビックリした。
だって4キロくらいは軽くありそうなトンネルのど真ん中に交差点。
事故とか大丈夫かなって思ったりしたけど、車の絶対数が少ないから大丈夫だったりするのかなって思ったりした。
 
犬ぞりに着いた。
そこには犬小屋が100くらい並んでいた。
大体2匹のメゾネットになっていて、それがたくさん。

犬はハスキーなんだね。
少し大きめで、人なつっこくて、すぐにすり寄ってくる。
可愛い、本当に可愛い。
 
しばらくハスキー犬の説明を受ける。
で移動して、網で囲われた大きめの犬小屋へ。
その一つにはpoppyと書いてあった。
 
忘れられない事もある、一瞬目の前が滲んだ。
 
そんでもって犬ぞりに乗り込む。
8頭立ての犬ぞりに、二人乗りのソリ。それに犬使いの人が一人。
サイトゥーンのお相手は、スコットランドから家族出来ている巨漢のマイクさん。
牧場経営してるらしい。
優しい人だけど、犬にとってはかなりの重さじゃないかな。120キロくらいあるもん、彼。でオランダ人の犬使いさん。
寒いとこ大変だな、ってマイク。
いやさ、子供出来てさ、働くの楽しいんだよね、って犬使いさん。
そりゃいいね、オレは別れちまった、
とかとか、世間話しながらハスキーそりが進んでく。
 
内容は悪くない。本当の体験が出来る。
たまたま夕方だからだと思うんだけど、空が紫色のグラデーション。
雪原は暗めだけど綺麗な青。
寒いんだけど、寒さを感じない美しい風景が流れていく。
 
欲を言えば、もっと高くても良いからサーメの村とか行ってみたい。
本物のサーメがいまだにテントで暮らしてるのならだけど。
 
犬ぞりの後、サーメのテントでお茶飲みなながら休憩。
唯一、この時だけレンズが曇った。
後はどんなに寒くても、一度もレンズが曇った事はない。
空気中の湿度も凍って、湿度が低くなってるんじゃないかな。
 
この夜、真上にオーロラが現れた。
北東から南西にかけて、夜の海を渡るようにオーロラの橋がかかっていた。
1時間くらいかな。
10分くらいは軽くブレイクした感じ。
緑色の帯が、はっきりと濃くなって、空の上を流れていった。
 
サイトゥーンはあまり宗教を信じないけど、地に宿るものは信じてる。
それがなんだか知らないけど、その見えない力に感謝していた。
 
しばらくして船はトロルフィヨルドへ。
船の名前のフィヨルド、その場所をゆっくり進む。
月明かりだけで見えるトロルフィヨルド
ゆっくりと風景が流れていく。
ただでさえ美しいフィヨルドが、ほんのりした月明かりに照らされて、
それが船の動きに合わせてゆったりと姿を変えていく。
 
映像に撮りたいと思った。
でもさ、暗すぎてムービーに写らない。
 
スチールでも、シャッタースピードが2秒とかだもん。
 
デジタルカメラの性能は十分に上がってるけど、写真に撮れない風景がまだまだある。
そして、それもまたあまりにも美しい風景だった。
ある意味、人間の眼ってすごいな〜って本気で思っていた。
 
映像に残せなかった夜のトロルフィヨルドは、美しい幻のようだった。