ウルルと風の谷と虹色の空の下で

サンライズを見に行く。
彼女を起こさないように、そっと部屋を出る。
まだ外は真っ暗。少し肌寒い。
ロビーで待つ。バスは10分くらいでやってきた。
ぼちぼち空きがある。
バスから窓の外を見る。今日も空は夜明け前に発光してる。
それにしても雲がない。たぶんかなり乾燥しているんだと思う。
空に全体にかかる虹の様なグラデーションがかかっている。凄いわ、単純に凄いわ。

その帰り、ウルルに寄る。
登れるかのチェック。朝はダメだった。
それでも、風景を堪能して8時頃にはロッジに戻る。
スイスの彼女は、外出していた。昼くらいまで今日は休憩。
仕事のメールをチェックしたり、シドニーの予定を考えたり。
昼前に、wi-fiのあるリーディングルームに行くと、彼女がいた。
 
今日はどこに行ったの?と聞く。
朝焼けの風の谷に行ったわ、と彼女。

車を持っていないので、そっちには朝行けない。
どうだった?って聞く。
素晴らしかったわって、彼女は答える。
なんとなく頭の中で、エアーズロックの岩を替えの谷に入れ替えた風景を創造する。
「ふーん、良かったね」って答える。
彼女は虹色の空やグラデーションを熱く話してくる。
たぶん見たものは同じなんだろうなって想像がつく。
でも、彼女は自分で行って、自分で見る場所を決めて、そこに立っている。
それだけでも価値のある事。
だって、それは誰かが同じところで見た事があるかもしれないにしても、
そこで彼女が見た風景は、彼女だけの風景。
 
特別とはそういう事。
そう思ったけど説明は出来ず、笑顔だけを返した。

今日はどうするのって、聞いた。
また風の谷に行くわ、と彼女は言った。
へえ、見に行きたいな、と答える。
一緒に行く?
いいの?
もちろん、ボディガードがいた方がいいし、と言われた。
 
ちょっとだけ必要ないと思いつつ、喜んでと答える。
 
〇〇さんも誘おうかと思ったけどやめた。
なんとなく、ちょっとときめいたからなんだけど。
 
午後5時、車で風の谷へ。
ほんの少し、光は西陽になっている。
エアーズロックで初めてのパブリックでない移動。
カンガルー見た?と僕は聞く。
シドニーから見たのは、カンガルー注意の看板だけよ、と言って笑った。
 
そか、と答える。
あ、カンガルーの肉はあちこちで見たわ、と言って笑った。
美味しい?と聞く。
食べてないわ。でも、私たちのロッジのレストランで売ってたわよ。
今夜は食べてみたいと彼女。
 
そんな会話をしながら、車は風の谷へ進む。
30分くらいで風の谷に到着した。
ちょっと日が落ちぎみ。
広い空に特有のグラデーション。何度見ても凄い。
三脚を立てる。やっぱり写真を撮る時は気合いが入る。
体は動いていないのだけど、頭の中がグルグル回る。
ゆっくりとフレーミングを決めていく。
空と、風の谷のバランスを微妙に調整する。
でも、その間にも空の色が変わっていく。
 
シャッターを切っては、待つ。
そんな繰り返し。
1時間くらい。
 
陽が落ちたところで、風の谷を後にする。

この帰り、太陽が太陽が沈んだ後の後光が射す大事を見た。
二人は唖然として、車を止める。
小さく三脚を立てて、その光を取る。
 
ワイルドプレイス、ちょっと緊張する。
道路はあるけど、完全に自然の場所。
毒蛇やら、小動物はいるはず。
 
帰ったのは午後8時頃。
〇〇さんを誘って、三人で食事。